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三菱UFJ銀行などの金融機関で他行宛ての送金ができなくなったシステム障害が10月12日午前、10日の発生から丸2日間を費やして復旧した。
銀行間の送金に使われる全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)のシステムに不具合が生じるという障害だ。
全国の10行に波及し、給与や児童手当の振り込み、中小企業の送金、保険金の支払いなどが滞った。計約506万件の取引に影響があり、国民生活や企業活動に多大な混乱を来した。
金融システムは経済の血流である。それを支えるインフラへの信頼を揺るがす深刻な事態だと認識しなければならない。
金融庁は全銀ネットに対して資金決済法に基づく報告徴求命令を出した。
全銀ネットは原因を徹底的にあぶり出し、同様の事態を繰り返さぬよう手を打たなくてはならない。併せて、顧客の損害を迅速に把握し、必要な補償をきめ細かく実施できるよう、各行と万全の対応をすべきだ。
不具合があったのは全銀ネットが運営する全国銀行データ通信システム(全銀システム)と金融機関をつなぐ中継コンピューターだ。7~9日の3連休中、このシステムを更新したところ、連休明けの10日、正常に動作しない障害を検知した。
昭和48年に全銀システムが稼働して以来、銀行の利用客に影響が出た障害は初めてだ。50年間にわたってトラブルがなかったことで、いざというときの備えに甘さがあったのなら問題は大きい。
障害時に代替手段を確保するバックアップ体制や復旧作業の手順、顧客対応が妥当だったかなども詳細に検証した上で、システム障害が生じても被害を最小限に食い止めるための方策を具体化すべきである。
中継コンピューターは保守期限を迎えるたびに更新され、今後も同様の作業が行われる。そのためにも改善すべき点を明確化し、緊急時に備える必要がある。金融庁も監督や指導を徹底すべきだ。
デジタル技術が急速に進化する中、金融システムに予期せぬ問題が起こることは今後もあり得よう。悪意のあるサイバー攻撃を受ける可能性もある。それらが日本の金融を揺るがすことがないよう官民で取り組みを強めなければならない。
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2023年10月14日付産経新聞【主張】を転載しています